2025/06/19

Taiwan Today

外交

蔡総統、2019年「世界平和の日」教皇メッセージに書簡で応じる

2019/01/29
蔡英文総統はこのほど、ローマ教皇フランシスコが今年1月に発表した2019年「世界平和の日」メッセージに呼応した書簡をしたため、教皇宛てに送った。写真は昨年10月、台湾で長年奉仕してきた海外出身のカトリック教会聖職者を総統府に招待し、茶話会を開催したときの様子。(総統府)
蔡英文総統はこのほど、ローマ教皇フランシスコが今年1月に発表した2019年「世界平和の日」メッセージに呼応した書簡をしたため、教皇宛てに送った。書簡の内容は以下の通り。
 
教皇閣下
 
教皇は2019年「世界平和の日」メッセージにおいて、「よい政治は平和に寄与する」と題し、平和と政治の間に密接な関係があることを示しました。また、政治が基本的人権を尊重し、促し、人々の意識を確立し、若者の才能を励ますことが、卓越した愛と徳となり、平和に寄与すると述べました。私はこれに強く賛同し、且つ敬服いたします。閣下の素晴らしいお言葉は「暮鼓晨鐘(人の目を覚まさせるような戒めの言葉)」であり、為政者が名利と権力に溺れることなく、また平和の促進という神聖な任務を負っていることを忘れることないよう戒めるものです。
 
教皇はベトナムのフランシスコ・ザヴィエル・グェン・ヴァン・トゥアン枢機卿が示した「政治家の真福八端」を引用しました。それは、政治家に対して言行一致であること、忠実であること、耳を傾けること、一致団結すること、抜本的改革を行うために尽力することなどを求める言葉で、深く考えさせられるものです。グェン・ヴァン・トゥアン枢機卿は教皇庁正義と平和評議会の議長となり、教皇ヨハネ・パウロ二世によって「希望の証人」と称されました。グェン・ヴァン・トゥアン枢機卿は2000年、台湾を訪れて講演を行いました。その言葉は台湾の人々の心を大きく揺さぶりました。なぜなら台湾は長い間抑圧され、国際社会で孤立した状態にありながら、一度たりとも自由と民主主義に対する信念を捨てることがなかったからです。
 
現在、バチカンを含め、世界には17カ国しか中華民国(台湾)を承認する国がありません。全人類の健康水準を最高に高めることを憲章に掲げる世界保健機関(WHO)ですら、政治的配慮から、台湾に住む2,300万人の健康という基本的人権をその枠組みから排除しています。しかし台湾は、だからといって報復の道を進もうとは考えません。それどころか、より積極的に世界市民としての責務を果たし、国際的な人道支援活動に取り組み、教皇の回勅「ラウダート・シ」に呼応しようとしています。また、自然環境の保護や地球の持続可能な発展を実現し、さらには移民に関する国際事務や人身取引防止のための協定あるいは備忘録を18カ国と結んでいます。世界が抱える共通課題に関わり、国際社会と足並みをそろえるという台湾の決意を示し、人身取引防止に全力で取り組んでいるのです。
 
2018年6月、私はフランス通信社の単独インタビューを受け、中国によって繰り返される圧力について意見を述べました。そのとき私は、漢字2文字で台湾を形容するとしたら、最も適切な言葉は「堅靭(=強靭の意味)」だと述べました。これは決して、対岸の中国と軍備拡張競争をしたり、貿易戦争を繰り広げたりする実力を台湾が持っていることを示すものではありません。民主主義と人権の価値が、いずれは私たちを平坦な道に導いてくれると強く信じているという意味です。
 
2018年、第一次世界大戦の終結から100年を迎えました。また、世界人権宣言の採択70周年の年でもありました。教皇は「無節制な武器の拡散」と「増大する脅威」を食い止めるよう呼びかけました。歴史は私たちに伝えてくれます。戦争と、暴力によって暴力を制する方法は、問題を解決することが出来ません。為政者はかたくなに対立する態度を捨て、人類の知恵を振り絞って、理性的な対話によって紛争解決のメカニズムを確立すべきです。
 
国家の指導者として、私は国際情勢の変化に対して常に関心を寄せ、その動向を随時把握しています。不確定要素であふれる国際環境の中、台湾のために生存と発展の空間を見つけ出すことが、私にとって当面の責務だと考えています。中国は中華民国台湾が存在する事実を直視すべきです。中国は、台湾の全住民の自由と民主主義に対するこだわりを尊重すべきです。中国は、平和で対等な方法によって私たちの間に存在する見解の違いを処理すべきです。政府あるいは政府によって権利を授与された公権力を持った機関同士が腰を据えて話し合うべきです。この「4つのすべき」こそが、台湾海峡両岸が正しい方向へ向かって発展できるかどうかの基本的且つ最も重要な鍵を握るものなのです。
 
中国は現在に至るまで、武力によって台湾に脅威を与えることを断念していません。また、国際社会において台湾の生存空間を狭めようと圧力を加え、私たちの国家の地位を矮小化しています。このような状況ではありますが、教皇はフランスの詩人シャルル・ペギーの言葉を引用して述べたように、平和の精神は暴力を超越できると私たちは信じています。 まさに、か弱い花が暴力という石の間で咲こうとするように。シャルル・ペギーの人生経験は、人類の自由と平和、尊厳という基本的価値の尊重が、あらゆる政治イデオロギーによる束縛を超越できることを証明しています。
 
教皇閣下に最高の敬意を払い、そのご健康とカトリック教会の発展をお祈りします。
 

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